互いの都合

PRI「一点、確認なんだけど…。最初に予定してた、パンダちゃんが里帰りしてご両親に会うスケジュールは、今月、予定通りだよね?」
パンダ「うん。例のお金の件ね」
PRI「じゃあ、3月に行ってくれるとしたら、それは本当に僕との旅行のためだよね? 行き帰りとも、僕と一緒にできるよね?」
当初の計画は、彼女が先に里帰りして、僕が後から追いかけて彼女の地元へ行く段取りでしたから、行きは僕一人だったのです。
パンダ「できるだけそうしたいけど、まだ、分からないの」
PRI「えっ? どうして? 僕はパンダちゃんと一緒に居られる時間が何よりもの幸せだと思ってる。だから、今度の旅行は絶対、行き帰りとも二人で一緒にいたいんだ!」
パンダ「私もできるだけ、PRIさんと一緒にいたいよ。でも今、絶対なんて約束はできないの!」
PRI「なぜ?」
パンダ「PRIさん、ここで私が絶対大丈夫と言って、もしもダメになったらどう思う? がっかりするでしょ? 信じて裏切られるようなものでしょ? アテもなく約束しても、何が起こるか分からないんだよ」
PRI「どういうこと?」
パンダ「今月の帰省は、親に頼んでお金を借りることもあるけど、それだけじゃないの。私のお母さんの持病がこの冬、具合悪くって、今、歩けなくなっちゃってる。お父さんには仕事あるから、十分な面倒見られないらしくって…」
PRI「そうだったの」
パンダ「正月前は言うほどは悪くなかったし、何かと大げさに言う親だしね。とにかく私に帰ってきてほしくって、言ってると思うんだけど…」
PRI「もしかするとパンダちゃん、今月帰ったら東京には簡単に戻れなくなるかも知れないんだね?」
パンダ「もちろん、私にもこっちの生活があるもの、何とか戻ること考えるよ。でも、わがまま言ってお金を借りるんだから、少しでも多く居てあげることも考えなきゃいけないの! PRIさんとは今だけじゃなく、これからもずっとお付き合いを続けていきたい。だから、私も無理な返事はしたくないし、言うべきことは溜めないでそのままPRIさんに話すよ。前倒しのことだって私、PRIさんに無理にとは言わない。ダメならダメで私、何とかすること考えるから、心配しなくていいの。頼まないで悩むくらいなら、頼んでみたほうがいいと思ってのことなの」
PRI「うん、うん…、分かった」
僕には僕の、彼女には彼女の、お互い都合があるのです。オトナのお付き合いをより分かっていたのは、僕より彼女の方なのかも知れません。壁を一枚突き破られた思いでした。